マイナーということ


エアコン・CDプレーヤー付き・オートマチック・・・
ペタペタと俺の額に紙が貼られていく。

やっと、売りに出されるんだろうか。
査定された値段が、俺につけられる。
別に高くっても何を得する訳でもないが、あんまり安いと切ない類だ。


そして今、俺は切なくなっているのだった。


この額の数字の。
なんと安い事よ。

もちろん事故車じゃない。乗り替わりはこれが初めてのワンオーナー車、状態は良好、週末しか走ってないから走行距離もまだまだいける。 年式も大して古くない。グレードも3種類あるカリスマの中でも最高のLSである。しかし、同じようなクラスの他車と比べると30%位低い価格設定である。

なぜか。

それは要するに、俺のことを誰も知らないからだ。

三菱自動車がカリスマを逆輸入して販売した期間が、わずかに3年しかない。96年10月から発売して翌97年10月にはGDIエンジンにマイナーチェンジ。99年10月、販売終了・・・
(ヨーロッパではマイナーチェンジを着々と遂げ、2002年現在でも販売されている)。

ギャラン等の発売が重なった事もあって、三菱はたいして宣伝に力を入れなかったのか、今となってはカリスマという名前を聞いても車だと思う人は少ないだろう。 当時の三菱車としては、車としての評価が非常に高かったにもかかわらず、だ。
逆に兄弟車のS40・V40のほうは、ボルボ車としては低い評価を受け、ボルボオーナーにとってカリスマは「さっさと無くなって欲しい」兄弟車だったのかもしれない。 (S40・V40は後に変更箇所1500にも渡る大幅マイナーチェンジを遂げている)

「俺カリスマに乗ってるんだ」

とおねーちゃんに言っても、は?なにそれ?と困惑させるだけ。カリスマって自称するなんて・・・と引かれてしまうかもしれない。ボルボと同じなのに、ボルボの様な威張りが効かない。

見た感じも渋い。よくあるセダンである。

稀少車が好きな人ならば、もっと派手に特別感のあるデザインの車に目がいってしまうだろう。
そして俺のような堅実なセダンを選ぶオーナーならば・・・故障時に直しやすい、もっと多数出回っている車を堅実に選ぶかもしれない。
三菱という企業イメージも、今はすこしおさまってきたにせよリコール隠しという暗い過去がある。いよいよ、堅実派には選ばれにくい。

しかも俺は、GDIエンジンになる前の、普通エンジンモデル。カリスマを欲しいと思ってくれた人でも、どうせなら燃費の良い後期モデルに乗りたいと思うかもしれない。


稀少車というか不人気車。地味なマイナー車。

その事実を嫌という程思い出させるこの価格。
しかも額に貼られて。


切ない・・・でも、この屈辱に、今は耐えよう。

車として走ってみればわかる。
いつだって自分に誇りが持てる働きをしてみせる。
買ってさえもらえれば。乗ってさえもらえれば。

カリスマさんは、ぎゅっと目蓋に力を入れた。

・・・じゃあ、ずっと買ってもらわなかったらどうなるんだろう。
という可能性が思いついたが、想像するのをやめた。
そんな事を考えたら、バッテリーが上がってしまいそうだった。